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 手紙 

手紙手紙
(2003/03)
東野 圭吾

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「手紙」

兄貴…直貴は胸の中で呼びかけていた。
兄貴、俺たちはどうして生まれてきたんだろうな…。
兄貴、俺たちでも幸せになれる日がくるんだろうか。俺たちが語り合える日が来るんだろうか。
二人でお袋の栗をむいてやった時みたいに…。

「差別はね。当然なんだよ」平野社長は静かにいった。
「当然…ですか」
「当然だよ」社長はいった。
「大抵の人間は、犯罪からは遠いところに身を置いておきたいものだ。犯罪者、特に強盗殺人などという凶悪犯罪を犯した人間とは、間接的にせよ関わり合いにはなりたくないものだ。ちょっとした関係から、おかしなことに巻き込まれないともかぎらないからね。犯罪者やそれに近い人間を排除するというのは、しごくまっとうな行為なんだ。自己防衛本能とでもいえばいいかな」
「じゃ僕みたいに身内に犯罪者が出た者の場合は、どうすればいいんですか」
「どうしようもない、としかいいようがないかな」
「〜君が今受けている苦難もひっくるめて、君のお兄さんが犯した罪の刑なんだ」
「〜ただ我々のことを憎むのは筋違いだといっているだけだ。もう少し踏み込んだ言い方をすれば、我々は君のことを差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば、家族をも苦しめる事になるすべての犯罪者にそう思い知らせるためにもね」


弟を大学に行かせるために兄が犯した強盗殺人。兄の罪がのこされた弟に重く降りかかります。強盗殺人犯の兄をもつ弟ゆえに受けなければならない差別が執拗に追いかけてきて、掴みかけた夢を、恋人を引き離します。それは直貴にだけではありません。哀しいかな妻にも、幼い娘にまで及びます。

直貴はすべての差別を受け容れる覚悟をします。そして獄中の兄に現実を突きつけます。

犯罪を犯すことの怖さ。罪を償うとは、どういうことなのか。考えさせられました。


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