「夕凪の街桜の国」
「私はいつも真の栄誉をかくし持つ人間を書きたいと思っている」(ジッド)
著者の好きな言葉です。たったの98ページ。
この本の評判は聞いていましたが、
実際に手にしてその薄さに驚かされました。
「しあわせだと思うたび 美しいと思うたび
愛しかった都市のすべてを 人のすべてを思いだし
すべて失った日に 引きずり戻される
おまえの住む世界は ここではないと 誰かの声がする」
戦争が終わり10年過ぎても、
生き残ったことを素直に喜べない。
生き残った自分をどこかで責め続けている。
後ろめたさを隠し持ち、幸せになる心にブレーキをかける。
心の傷を開いてみては、閉じる。
前向きで明るいから、なおさら、せつない。
後から後から打ち寄せる波のように何かがせまりくる本でした。
たくさんの悲惨な事実、多くの犠牲がもたらした平和に
目そむけぬくぬくと生活していた。そんな自分を思い知りました。
「ヒロシマ」にも原爆記念館にも足を運んでいないかった。
行こうともしてなかった。
正に今、「ヒロシマ」に行こうと思っただけで身が詰まるような、
胸がキュンと締め付けられるような、スッとと引いた気分になってしまう。
原爆なんて許せない、反対だと言いながら。
事実を見ようとも、知ろうともせず、逃げていました。