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漆黒の霧の中で
漆黒の霧の中で―彫師伊之助捕物覚え
(1982/02)
藤沢 周平
商品詳細を見る
版木彫り職人伊之助の仕事場彫藤に、同心石塚がたずねて来たのは川岸にあがった水死体の身元調べを頼むためだった。
元岡っ引き伊之助は、十手こそ返しているが、岡っ引き仲間がどうにも困ったとき頼りにできる腕利き。しかし十手は、伊之助の胸に忘れがたい暗い記憶を残していた。
女房のおすみが岡っ引きの仕事を心から恐れ、忌み嫌って、男をつくり心中したのだ。死なれた後で初めて伊之助は女房の気持ちを知った。それは清住町の親分と呼ばれて評判になり仕事に油が乗って来たときのことだった。
石塚の話を聞きながら、仕事に来る途中、偶然にも水から揚がった水死体を見た伊之助は、すこぶる好人物で無口な目立たない男、七蔵の姿を思い浮かべた。孤独な、酒も飲まず女も買わなかった34の男は、一体何を楽しみに生きていたのか。またそんな男を、どこの誰が、何のわけがあって殺したのだ…、と。
伊之助は彫藤の仕事の合間をやり繰りしながら事件の真相を究明していく、身の危険に晒されながら次第にのめり込んでいく。
過去を引きずりながら探索を続ける伊之助の姿と町人たちの細やかな人間模様が魅力です。
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[2008/12/22 05:50]
読書
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悩む力
悩む力 (集英社新書 444C)
(2008/05/16)
姜尚中
商品詳細を見る
明治の文豪「夏目漱石」と同時代に生きたドイツの社会学者「マックス・ウェーバー」は、およそ100年前、「個人の時代」の始まりに、時代に乗りながらも、流されず、時代の差し出した新しい問題に向きあい大いに悩みました。この時代、こうした悩みは「知識人の特権」といえるものでしたが、知識や情報の開かれた現代では万人共通の普遍化された悩みとなって人びとを苦しめています。
二人の半世紀に及ぶ生涯には時代を直視し苦悩する人間のしるしが刻まれています。そんな彼らをヒントに著者の経験を交えながら猛烈な変化と格差の広がる現代をどう乗り越えて、どう生きていくか、を考えます。
「自由と孤独と己とに充ちた現代に生まれた我々は、その犠牲としてみんな此淋しみを味わわなくてはならないでしょう」漱石の『心』のなかで絶望的な孤独感を抱えている先生がいいます。
家族や人と人とのきずな、相互理解がうすれ、安らぎを得ることが難しくなっている今日、先生の孤立感や憂鬱が日本の殺伐とした世相を覆い希望の見えない社会を作っているのです。
しかし他者とつながりたい、きちんと認めあいたい、と考えるのであれあば、「まじめに悩み」「まじめに他者と向きあう」こと。とにかく自我の悩みの底を真剣に掘り進んで、その先の他者と出会えるまで突き進み、悩みぬき、突き抜けること、そこにその人なりの解答が出てくる、と著者はいいます。
人間的な悩みを人間的に悩む。それは生きている証であり、人とのつながり中でしか「私」というものはありえないのだから、他人の自我を認め、自分も認められること。そこに「生きることの意味」が確立してゆく、のだといいます。
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[2008/12/16 23:50]
読書
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時のかさなり
時のかさなり (新潮クレスト・ブックス)
(2008/09)
ナンシー ヒューストン
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物語は現在から過去へと時をさかのぼりながら6歳の子どもの視点で語られます。ひとつの家族の四世代にわたる歴史。それを多感な少年少女の無邪気さと澄み切ったしたたかな目でみつめ、過去をときほぐします。
ブッシュ政権下のアメリカ、イスラエル、カナダ、ナチス統制下のドイツへと、ソル、父ランダル、祖母セイディ、曾祖母クリスティーナが主人公となり1章から4章を語り継ぎます。
現代の米国カリフォルニアの豊かな家庭で甘やかされながら育つソル。我儘で自意識過剰な鼻もちならない子どもソルがこの物語を高揚させ、どきどき、はらはらと読む者を惹きつけ引っ張ってゆきます。そして1982年、レバノン戦争ただ中、アラブ人の美少女との初恋に苦悩するランダル。自由奔放で輝くばかりの魅力に溢れる母に憧れるセイディ。ナチス統制下のミュンヘンで、歌を愛し、家族を愛していたクリスティーナ―を実の兄亡きあと、一家に引き取られた新しい兄が彼女の運命を変えていきます。
世界的に有名な歌手である曾祖母のエラ。講演で世界中を飛び回っている祖母セイディ、二人はとても個性的な女性です。けれども一番魅力的なのは、人当たりの良い祖母、自由奔放な母親、歌の好きな豊かな感性の持ち主である少女エラ(クリスティーナ)です。物語を最後まで読んで、ようやく彼女がどれほど過酷な運命に翻弄されてきたかを…知ることになります。
第一章 ソル(2004年)
第二章 ランダル(1982年)
第三章 セイディ(1962年)
第四章 クリスティーナ(1944〜1945年)
※第二次世界大戦中に二十万以上の子どもたちがナチスに拉致され行方不明となった。戦後その子どもたちを家族へ送り返す救済活動が国連主導で行われた。この国連活動に従事した人物の手記を読んだ作者が衝撃を受け、作品執筆のきっかけとなった、と訳者があとがきに記しています。
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[2008/12/08 23:03]
読書
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静かな木
静かな木
(1998/01)
藤沢 周平
商品詳細を見る
「静かな木」
隠居後、静かな晩年を思い描く武士に、婿養子に出した息子の思いがけない事件。それは過去の我が身の事件を想起させます。老いてなお熱き武士の誇りと矜恃を抱く彼は奮いたち、家名をかけた勝負に出ます。
「生きていればよいこともある」。無骨な老武士のつつましい感慨、平凡さに思わずニッコリします。
「岡安家の犬」「偉丈夫」
張り詰めたなかにも温かな雰囲気が醸し出される。結末にホッと笑いがこぼれてしまう。一歩間違うと取り返しのつかない事態へと進展する事件を不器用な武士の誠実一途な行動(何とも可愛げのある)で、周りの者の気持ちを和らげ解決へとみちびいていく。読後、しみじみと嬉しさが押し寄せてくる、そんな明るい気持ちにさせられます。
☆岡安家の犬 ☆静かな木 ☆偉丈夫
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[2008/12/06 23:55]
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格闘する者に○
格闘する者に○ (新潮文庫)
(2005/03)
三浦 しをん
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漫画喫茶で5時間に18冊の漫画を読破するという漫画オタクの可南子さんは漫画編集者に憧れて就職活動に奮闘します。立ち塞がる傍若無人な就職試験、編集者たち。青春の日々の悪戦苦闘ぶりを冷静に分析し率直に語る可南子さん。
大学生の砂子や二木君とのふんわりとした友情。繊細で魅力的な義弟、旅人。なぜか自分と似ている義母とのしっくりしない関係。政治家の父親の後継者を選ぼうとする親族会議の顛末。そんな小さな嵐を過ごして少しずつ家族らしくなっていく様子が微笑ましい。
初老の書道家、西園寺さんとの交際には、孫と祖父のような温かさ、可南子さんの素直な優しさが感じられます。
「脚」。西園寺さんが彼女のためにだけ書いてのこしていった一文字に、笑いながらホロリとしました。
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[2008/12/05 23:58]
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